学修成果の可視化を起点に、教学マネジメントを次の段階へ。法政大学が描く“管理に閉じない”大学DXのかたち
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学修成果MOE
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退学防止・学生フォロー
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データ活用・可視化
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業務効率化
法政大学
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導入したサービス
- 学修成果MOE
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導入時期
2023年
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概要
◆導入検討のきっかけ
コロナ禍を契機に、短期的な授業対応とは切り分けて、中長期的な視点から“大学として教育の状況を点検できているか”を見直す必要性が高まったため。
◆導入の決め手
業務効率化ツールとしてではなく、全学的なディプロマ・ポリシー(DP)を軸に、教学の立場から学修成果を捉え直し、データを整理・活用できる基盤として設計されていたこと。
◆導入後に見られた変化
感覚や経験に頼っていた教学議論が、共通のデータを前提に具体的・建設的に行えるようになり、執行部から現場まで一貫した点検が進むとともに、事務方の集計負担も大きく軽減された。
◆運用・活用における工夫
学生を管理・統制するのではなく、自らの学びを客観視し、次の一歩を見つけるための「学修の鏡」として位置づけている。
interview
MEMBER
参加者
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教育開発支援機構
機構長
山本 兼由 様
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学務部 学務課
課長
土屋 貴之 様
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学務部 学務課
主任
鍋田 純子 様
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教務部 教育システム課
藤原 茂之 様
学修成果の可視化に取り組まれた背景を教えてください。
山本機構長:
直接的なきっかけは、2020年のコロナ禍でした。
もっとも、それ以前から教育や学修にデジタルをどう活用していくかという議論自体はありましたが、当時は大学全体としてDXを前提に教育を設計するという段階には至っておらず、コロナ禍への対応も突発的・緊急的な措置に追われていたというのが実感です。
そうした中でオンライン授業への対応を進めるうちに、「これは一時的な対応なのか、それとも大学教育のあり方そのものが変わる転換点なのか」という議論が学内で起こりました。そこで私たちは、目の前のコロナ対応という短期的な課題と、今後の大学教育をどう設計していくのかという中長期的な視点を切り分けて考える必要があると感じるようになりました。
その過程で浮かび上がったのが、「自分たちは、いま何ができていて、何ができていないのかを、大学として説明できる状態にあるのだろうか」という問いです。個々の授業や教員の取り組みについては多くの情報がある一方で、大学全体として教育がどのように機能し、入口から出口までの学修成果を客観的に点検・説明できているかという点には、正直なところ不安がありました。
こうした問題意識から、自大学の教育の状況をエビデンスベースで把握し、全学的に点検・説明できる基盤が必要だと考えるようになったことが、システム導入へと舵を切った最大の理由です。
学内ではどのように検討を進めていかれたのでしょうか?
山本機構長:
導入にあたっては、トップダウンで「このシステムを使う」と決めるのではなく、教育開発支援機構を中心とした、いわば経営ラインとは異なる教学ラインが主導し、関係部署や教職員が関わりながら、全学的な視点で議論を重ねていきました。
具体的には、教育支援担当理事のもとでワーキンググループを立ち上げ、「ウィズコロナの時代に、大学の教育はどうあるべきか」という問いを、できるだけ基本的なところから整理していきました。
本学には15学部あり、それぞれに異なる教育文化があります。当初は「なぜ共通化が必要なのか」との難色もありましたが、拙速に結論を出すのではなく、粘り強く対話を続けてきました。その過程で、この取り組みは単なるシステム導入ではなく、「法政大学の教育とは何か」を全学で改めて問い質すプロセスでもあったと感じています。
土屋課長:
2024年度に公開された「法政大学ICT基本戦略」も、方向性を一部の部局だけで決めるのではなく、教員・職員・関係各所が膝を突き合わせて議論を重ねた結果が取りまとめられたものだと思います。システムを導入すること自体が目的ではなく、「学生のために、大学としてどうあるべきか」という視点で整理されたからこそ、現在の運用につながっているのだと思います。
多くのシステムがある中で、今回の仕組み(MOE)を選んだ決め手は何でしたか?
山本機構長:
決め手となったのは、「管理のためのツールにしない」という私たちの考え方と、この仕組みの設計思想が一致していた点です。
データを集めること自体は、それほど難しくありません。ただ、数字をそろえた瞬間に、「分かった気になる」、「管理できる・評価できる」という方向に引っ張られてしまう危うさがあると感じていました。学修成果の可視化は、学生や教員を単純に評価・序列化するためのものではなく、数値の扱い方を誤れば、教育の本質そのものを損なってしまいかねません。
そこで私たちが軸として位置づけたのが、ディプロマ・ポリシー(DP)です。
DPは、「この大学で学んだ結果、どのような力が身についているのか」を示すものであり、学部ごとの違いを消すのではなく、その違いを前提としたうえで本学のすべての学生の“学び”を捉えるための拠り所だと考えました。
本来、DPは学部ごとのカリキュラム・ポリシー(CP)の先にあり、大学全体で一律に扱うことは簡単ではありません。しかし、本学では15学部それぞれのDPを“大学全体のDP”として汎化・串刺しにすることで、多様性を保ちながら全体を俯瞰できる仕組みを目指しました。
この難しい設計思想を、実現できる基盤であったことが、この仕組みを選んだ決め手です。
導入後、現場にはどのような変化が生まれていますか?
山本機構長:
最大の成果は、議論の質が変わったことです。
これまでは「最近の学生は・・・」といった感覚(暗黙知)で語られていたものが、具体的なデータ(形式知)に基づいて議論できるようになりました。
例えば、学部執行部では成績不振学生の早期発見や、入試経路別の修得状況の分析などが、教員自身の手で行えるようになっています。
土屋課長:
職員の業務負担も変わりました。以前は会議のたびに膨大なデータを手作業で集計・加工していましたが、今はシステムを見れば一目瞭然です。
事務作業の時間が減った分、教職協働で「このデータをどう教育改善に活かすか」という、より本質的なサポート業務に時間を割けるようになりつつあります。
学生や教員は、このシステムをどのように活用すべきだと考えていますか?
山本機構長:
私たちはこのシステムを、“学修の鏡”だと捉えています。
大学は、画一的な人材を生産する工場ではありません。学生が自分自身の能力や特徴を見つけ、新しい価値を生み出す場所です。
学生には、可視化されたデータを特に「自分は何が得意で、何を伸ばすべきか」を考える鏡として使ってほしい。決して、大学側が学生をモニタリングするためにだけ使われるべきではありません。
教員にとっても同様です。自分の授業が学生にどう届いているか、社会が求める価値とズレていないかを感じ取り、授業改善のヒントにする。そうした自律的な改善サイクル(内部質保証)が回ることを期待しています。
今後の展望についてお聞かせください。
山本機構長:
今後は、蓄積されたデータを活用し、入学時のミスマッチ解消や、学部間の流動性を高める取り組みにも繋げていきたいと考えています。
「思っていた学びと違う」と感じてしまうことは、学生にとって決して間違いではありません。大学はそれを不幸と考えず、AIや深層学習を活用しながら学生一人ひとりに最適な学修機会を提案できれば、学生の可能性はもっと広がるに違いありません。
もちろん、個人情報の取り扱いやセキュリティといった“安全の担保”は大前提です。そこは慎重に進めつつも、守りに入りすぎず、攻めの教育改革を進めたい。
今回、ハーモニープラス様に伴走支援いただいたことで、学内の議論が加速しました。今後はさらに踏み込んで、リカレント教育や他大学との連携も含めた、“自分たちだけでは育てられない人材”を輩出するための提案を期待しています。
法政大学は、データを“教育学修の管理”ではなく“学生の多様な成長”のために使い、日本の大学教育の新しいモデルを作っていきたいと考えています。
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